セクハラ指針からみるハラスメント対応・対策

 

 

事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針(平成18年厚生労働省告示第615号)(いわゆるセクハラ指針)に、セクハラ対策で企業が講じるべき9項目の指針が提示されています。

 

 これらはセクハラについてのものですが、広くハラスメント対応・対策として、パワハラ・モラハラ等にも同様の措置を講じることで、ハラスメントに対処できると考えます。

 なお、指針にいう「労働者」には非正規労働者(派遣社員、パートタイマー、契約社員等)も含まれます。派遣社員対しては、派遣元にも派遣先にも均等法第111項の規定が適用されます。(派遣法第47条の2

 

ハラスメント対策(事前措置)に分類できるもの 〜当事務所の私見

@   方針の明確化とその周知、啓発
・ハラスメントの内容、ハラスメントを許さない方針を明確化し、管理監督者を含む労働者に周知、啓発する。
(社内報、パンフレット、社内ホームページ等々に記載する)

A   ハラスメント行為者への厳正な対処方針の明確化
・就業規則などにハラスメントに関わる言動等を行った者に対する懲戒規定を定める。
・セクハラ、パワハラに関する項目を設け、どういった行為がハラスメントに該当するのか? を解説しておきます。
・ハラスメント行為者は、これら懲戒規定の適用対象となることを周知、啓発。
・該当行為があった場合、加害者となった労働者にどういう懲戒規定が適用されるのか? をあらかじめ解説しておきます。

B   相談窓口をあらかじめ定める
・相談に対応するための担当者、制度をあらかじめ定める。なお、相談者は少なくとも男女1名ずつの2名体制とすること。
・外部機関に相談対応を委託する。
21世紀職業財団による平成15年調査では、従業員が1000人以上の企業では89.5%が相談窓口を設けていますが、過去1年間に実際にセクハラ相談があったと回答した企業は18.6%にすぎず、なかったが54.0%、不明27.4%という結果が出ています。
 しかし、外部機関の一つとされる労働局均等室へのセクハラ相談件数は年々増加傾向にあり、内部の人間しかいない社内相談室がうまく機能していない実態が見てとれます。

C   相談窓口の担当者が適切に対応できる体制を作る
・相談内容や状況に応じて、窓口担当者と人事部門が連携を図れるようにすること。
・窓口担当者はあらかじめ作成したマニュアルに基づいて対応する。

D   プライバシー保護のために必要な措置を講じる
・被害者、行為者の個人情報保護のための対策マニュアルに基づき対応。
・プライバシー保護に必要な対策を講じていることを周知、啓発。

E   ハラスメント相談者、調査協力者の、事後の不利益を防止
・相談や協力によって、解雇等不利益な処遇を受けることがない旨を就業規則などに規定する。
・相談や協力によって、不利益処分がないことを社内報などに掲載して配布し、労働者に周知、啓発する。

 

 

ハラスメント対応(事後措置)に分類できるもの 〜当事務所の私見

F   発生後の、事実関係の迅速、正確な確認
・相談者、行為者の双方から事実関係を確認。第三者からの聴取。
・確認が困難な場合(特にセクハラは密室で行われる場合が多い)は、均等法第18条に基づいて調停の申請(改正均等法により、セクハラも調停対象となっています)を行う、中立的な第三者機関に紛争処理を委ねる。
・セクハラ以外のハラスメントは、個別労働紛争解決促進法第20条による都道府県労働局等によるあっせん申請の利用、となるでしょう。

G   行為者、被害者に対する適正な措置
・行為者(加害者)に対し、服務規程等に定められているハラスメントに関する規定に基づいて懲戒その他の措置を講じる。
・被害者と行為者の関係改善に向けての援助。
・措置が困難な場合は、セクハラについては均等法第18条に基づく調停の申請、第三者機関への委託。
・セクハラ以外のハラスメントは、個別労働紛争解決促進法第20条による都道府県労働局等によるあっせん申請の利用、となるでしょう。

H   あらためて、再発防止に向けた方針の明確化と周知、啓発
・@の内容をあらためて明確化、周知、啓発。
・研修、講習等を改めて実施。(以上は、事実確認ができなかった場合も含めて)
※研修、講習等は、求められる内容が職責によって異なるため、少なくとも管理職と一般職に分けて、可能であれば職級(仕事の内容や責任度が同じくらいのグループ)ごとに実施するのが望ましいと考えます。

 


※あっせんと調停の違い

あっせん

調停

・当事者の間に入って「話し合いを促進する」ことに比重を置きます。

・調停委員が主導権をとり、作成した調停案を受諾させることを目指します。



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