★ ハラスメントと労災の精神障害認定

 

 ハラスメントの被害者になったからといって必ずしも精神障害を発症するわけではありません。しかし、行為の発生以降の一定期間内(おおむね6カ月以内)に精神障害を発症し、個体側要因がなく、業務以外の原因も見当たらない、といった場合などには、ハラスメントに起因したものではないか? といった疑念が濃くなり、当該ハラスメントに起因した業務上精神障害等の発症として、労災申請へと繋がる公算は強くなります。

 

<心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針>によると。

(基発第0406001号。平成2146日)

1.精神障害の業務起因性判断要件

次のいずれの要件も満たす精神障害は、業務上の疾病として取り扱う。

@   対象疾病(国際疾病分類第10回修正、以下「ICD−10」というが、その第X章「精神及び行動の障害」に分類される精神障害とする)に該当する精神障害を発病していること。

A   対象疾病の発病前概ね6か月の間に、客観的に当該精神障害を発病させるおそれのある業務による強い心理的負荷が認められること。

B   業務以外の心理的負荷および個体側要因により当該精神障害を発病したとは認められないこと。

 

ただし、精神障害が労災認定されるまでには多くの調査が実施されます。

「職場における心理的負荷評価表」から考えると、どうあっても心理的負荷の強度がVに該当するはずだ、と思われただけでは、多くの場合根拠不足となるでしょう。

 

それでも、上記平成2146日基発第0406001号『心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針の一部改正について』に基づき、「職場における心理的負荷評価表」も見直され、ハラスメント項目として次の項目が追加されています。

 

E   出来事の類型 『対人関係のトラブル』

(1)   平均的心理的負荷の強度 (具体的出来事)
・ひどい嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた。

・負荷強度   V

 

セクハラについては従来から「セクシュアルハラスメントを受けた」という項目がありました。が、パワハラ・モラハラといったセクハラ以外のハラスメントについては、これまで具体的な項目は存在していませんでした。(「上司とのトラブルがあった」で評価していました)。しかし、精神障害等を起因とする労災請求事案において、当該パワハラ等をその理由とする事案の増加といった社会情勢に沿った追加であると考えられます。

 

また、当該考え方については、今後も見直される(実際に検討されています)ことが予想され、労働者保護(より認定までの要件の緩和等)の元、ますますハラスメント予防対策はその重要度を増すと考えて間違いないでしょう。

※申請者の留意点

・労災申請後、行政による調査が行われます。本人の聴取に加えて行為者、つまり加害者とされる方も聴取されますし、他の関係者からも事情を聴くことになります。その後、管轄監督署としての意見を都道府県労働局に提出し、専門医の意見等も聞いて判断されます。

・行政の判断が出るまでの期間はおよそ6カ月が目処、とされていますが、現在申請件数が増加傾向にあることもあり、実質およそ10カ月程度かかるようです。




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